~~~はじめに~~~

         「被差別部落」…皆さんはこの言葉を聞いてどう思われますか?
私が、このブログを始めることにしたのは、職場で「○○地区は危ない」などと
“心無い会話”が聞こえてきたからでした。それも複数の方から…。政策的には、約150年前に「解放」されたはずの被差別部落ですが、職場だけではなく、インターネットやパルプマガジン(低俗雑誌)などで、今尚、多くの差別があることを実感します。被差別部落出身の妻と結婚し、部落の暮らしを知る中で「部落の良さや暖かさ」を皆さんに伝えたいと思います。

2019年8月22日木曜日

職人歌合に見る中世被差別民の姿-1 紺掻

第4番 紺掻 vs 機織
【紺掻(こうかき)】



「職人歌合にみる中世被差別民の姿」と題したシリーズの第一回には、
もしかしたら相応しくないのかもしれませんが、
とにかく歌合の順番通りにやるには、
被差別民に関連しうる職人は避けて通れない訳で・・・


なぜ、相応しくないのかと言いますと、
「紺掻は果たして被差別民だったのだろうか?」
と言う、そもそものコンセプトを揺るがす疑問が出てくるのです。


網野善彦氏はその著書の中で、特殊な能力を持った職人は、
当時から、やはり特別な存在だっただろうと書いておられます。

とは言うものの、機織りに関しては、
私的には被差別民では無かったとの認識でおりますので、
ここでは紺掻に対しての検証になります。

とにかく、このシリーズに関しては、研究者の皆様には大変失礼ではありますが、
これまでの定説にとらわれず、独自解釈でやってみようと言う趣旨ですので、
ご無礼を承知で好き勝手書かせていただこうと思います。

紺掻・・・「こうかき」紺屋とも言われています。
所謂、染物屋さんです。

染物で被差別民と言えば「青屋」が知られています。
青屋は藍染を生業とする人々でしたが、地域によっては差別の対象とされ、
江戸時代には「エタと同等」と言う判例も出て、主に行刑の役を担いました。

元京都国立博物館学芸課長の下坂守氏は「紺屋と青屋は違う」と指摘されています。
紺屋は藍もやるが染物全般。
対して青屋は藍染めの傍ら、エタと共に行刑にあたった。
その道具についても、甕を使うのが紺屋で、桶を使うのが青屋ということですが、
実際にはweb上で藍染屋さんの写真や映像を見る限りでは、
(藍液で染まっているのでわかりにくいが・・・)甕様にも見えます。

Website:「しゃかいか!」より引用

職人歌合が書かれた時代は中世でしたので、
時代に伴って桶から甕へ変化したか、地域的なものなのかもしれません。

若しくは、紺掻が甕を使っている事から見て、
「紺掻が時代の流れとともに青屋へ変化した」とも考えられます。
ここは、更に研究の余地がありそうですが。

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さて、青屋が差別の対象であったのは、それ以外にも理由がありました。
藍というのは、抽出した液体(染料)は限りなく黒に近い緑、
或いは濃紺なのですが、染め終えて空気に当て酸化させると、
お馴染みの鮮やかな藍色に変わります。

科学が・・・いや、そもそも科学という概念自体が無かった時代、
「黒いものが時間を経て鮮やかな藍色に変わる⁉」
庶民にとって青屋の仕事は摩訶不思議に写ったに違いありません。
それだけでは済まずに、西洋の魔女狩りの如く畏怖嫌厭だった事でしょう。

また、染料に繊維をどっぷりと浸ける訳ですから、
腕が青く染まってしまいます。
そのような日常から離れた職人達の姿も、見方によっては
差別の対象になるには十分だったのかもしれません。

勿論、今は藍染の実用性や芸術性も広く認知されているので、
差別の対象にはなり得ないですが。

(何度も掲載してますが)紺掻

さて、歌合せに描かれた紺掻は甕を用いています。
そして甕に貯められた染料は薄い青色。
手に持った布も薄い青色=浅葱色をしています。

幕末に岡山で起こった渋染一揆は、
「衣服は無紋の渋染又は藍染」とした藩令に怒った
部落の先人達=エタが起こした反対一揆なのですが、
部落解放人権研究所 歴史部会学習報告(2008年1月19日)の中で、久保井規夫氏が
渋染一揆以前の岡山藩の御触書でも「浅葱空色無地無紋」との文言が見られる』
と指摘した上で、『渋染又は藍染は囚人服の色であった』と記述されています。
その事も、部落民に怒りを覚えさせるに、
十分すぎる理由の一つであった事でしょう。

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先にも書いた通り、これからは私の全くの独自解釈ですが、
歌合わせが描かれた中世に、少なくとも紺掻は被差別民ではなかった。
しかし、時代の流れと共に次第に青屋と同化していき、
やがて賤視される存在になったのではないか・・・
そう考えるのです。

いずれにせよ、一度藍染屋さんにもフィールドワークしてみなければなりません。

【職人歌合に見る中世被差別民の姿-1 紺掻】

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