今年の冬は、本当に厳しく長い冬でした。
異常気象による積雪被害も各地で見られましたが、被害にあわれた皆様には、
心からお見舞い申し上げますm(_ _)m
さて、もうすぐ入学式ですね。
昨日の、「部落の受験シーズン」に関連して、今日は、「被差別部落と学校の歴史」と言うことで、
少し話をさせていただこうと思います。
今日の、被差別部落では、一般地区と何ら変わらない就学率・進学率を誇っておりますが、
ここに来るまでには、非常に苦難の道程であったと言わざるおえません。
今回は、被差別部落と学校の歴史というお題なのですが、余りにも幅が広く、
私も、文章に起こそうとしても、散漫になってしまい、上手く書くことが出来ませんでした。
そこで、今日は、以下のように、「時代を区切って」書いてみようと思います。
1,幕末~明治~水平社時代
2,昭和~同和関連法律施行時代
3,闘争時代
4,現在
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》》1,幕末~明治~水平社時代
約300年続いた江戸幕府も、最後の将軍「徳川慶喜」の大政奉還により、明治新政府へ。
それにより、同じく固定化されていた身分制度も制度上は消滅しました。
所謂、『解放令』です。
明治4年に発令された『解放令』は、実は通称。
正しくは、「穢多・非人の称を廃す」という太政官布告なのですが、『解放令』の方が一般的で、
通りがいいので、このブログでも『解放令』を用いることとします。
解放令が発令され、制度上、国家による「差別」は、なくなりました。
しかし、無くなったのは、「エタ」と言う名称だけではありませんでした。
彼らは、製革業や警察業務などの数々の「職業的特権」を持っておりました。
穢多身分の者しか持ち得なかったこの職業的特権により、
江戸時代の穢多達の生活水準は、決して低くなかったことが分かっています。
いや、むしろ、「年貢」で苦しめられる農民よりも、身分的には差別されるが、
生活的には裕福であったのです。
例えば、時代劇や映画で、百姓たちが貧乏で、今日食べるものにも困っているシーンを
度々目にしますが、年貢に追われ日々の生活が立ち行かない農民たちを尻目に、
穢多身分の者は、日常的に牛や馬の肉を食べていたことでも良くわかります。
しかし、明治政府発足により、この特権も失われることになります。
この後、部落民達の生活は一変。
たちまち、貧困が彼らに襲い掛かりました。
解放令が出されたのはいいのですが、差別の実態は変わらず、
“名称”だけ解放された部落民達は、
(実際には、新平民と呼び方を変えられただけで、差別は続いていたのです)
被差別身分からの解放を諸手を上げて喜ぶことも出来なかったのが実情です。
このような貧困の中、今日の近代学校教育がスタートするわけですが、
部落民達は、「学校へ行きたくても行けない、又、学校へ行きたくない」状況が
長く続くこととなります。
「学校へ行くことなんぞもってのほか!そんな暇があったら家の手伝いせぇ!」と言う親。
「はぁ?学校へ行かす?あんたとこは変わっとるなぁ」と言う同じ部落の隣人。
「エタの子!エタの子!」と言う同級生。
「お前んとこは貧乏やからなぁ!」と皆の前で笑いものにして言う教師。
「俺は、もう学校へ行きとうない」と言う部落の子・・・etc
いろいろな事情が子供達を、そして部落を取り巻きます。
ただ、この様な貧困・劣悪な生活を極めた明治時代ですが、
いくつかの地域では、教育の重要性を認識する地域の篤志家、又、
地域住民有志でお金を出し合い、部落民が通う為の「学校」を建設する動きも見られます。
また、当時は、融和運動が盛んでしたので、部落外の運動家が、
子供たちを学校へ通わせる活動をしていました。
しかし、まだまだ、学校へ通える子供たちは極々一部で、
そのほとんどが、前途したような理由で、学校へ通うことが出来ませんでした。
これは、本当に近年まで続く悪しき伝統で、今でも高齢の方は“文字”さえも、
十分に読み書きすることが出来ない方が多いのです。
明治時代は、一貫して子供たちを学校へ通わせるための下準備的な時代でしたが、
まだまだ、現実に学校へ通える状態ではありませんでした。
部落出身の女性解放家であり、作家でもある住井すゑさんの
有名な部落小説「橋のない川」。
明治~大正初期の被差別部落に暮らす少年の成長をテーマにした、長編小説ですが、
その中に、未だに私の心に残る、とても切ない描写があります。
主人公「畑中孝二」は、奈良県の部落(実在の奈良県K部落がモデルと言われている)に
住む高等小学生。
修学旅行で京都へ行った時のことだ。
クラスの修学旅行リーダーに任命され、これまで受けてきた差別にも負けず、
気丈にリーダーを務めるが、事件は夜起こった。
孝二は、一般地区の同級生3人と計4人で相部屋で寝ることになったのだが、
消灯前、一般地区の子達は、「連ションや~!」といって、次々に部屋を出てしまう。
10分・・・30分・・・。
孝二は、一人ポツンと部屋で待っている。
消灯時間はとっくに過ぎたが、「もしかしたら、他部屋の生徒に捕まって戻ってこれないのかも。
自分一人先に寝てしまっては悪い」と、プラス思考の反面、フッと嫌な予感がよぎる。
そして遂に、同級生たちは戻ってくることがなく、孝二は一人朝を迎えることになる。
スイマセン。
自分でこれを書いていて、今、私は目頭が熱くなっています。
涙がこぼれそうです。
部落出身者ではなく、部落差別も経験したことがない私でも、
その光景を思い浮かべ、泣きそうになる。
すごい小説です。「橋のない川」。
仮に、学校へ行けたとしても、あらゆる差別が待っている。
それは、同級生からであり、教師からであり、保護者からである。
この様な、学校での不当な差別に対し、対抗する手段を持たない部落の子供たちは、
次第に、学校へ行く気力を失っていくのです。
このような状況を打破し、部落の子供達が、学校での不当な差別を受けずに通える
(と、言っても、貧困その他の家庭の事情で通えない子達が大半でしたが)ようになるには、
大正11年の全国水平社の誕生を待つしかありませんでした。
水平社は、これまでの「部落が差別されるのは自分たちの生活環境や風紀の乱れによるもの。
自分達が努力して、生活改善を行なわければならない」との考え(融和思想)からの脱却、
「差別の原因は差別する者にある」と言う糾弾主義で部落解放運動の礎を築きました。
水平社の誕生は、部落の生活向上に大きな恩恵をもたらしたことは、
紛れも無い事実であり、又、その運動により、『入会権や祭りへの除外』等々の直接的差別は、
圧倒的に少なくなっていきますが、残念ながら、それは、差別が影に隠れただけでした。
水平社誕生から、約100年。
未だに差別が残っているのは悲しい限りですが、
就学率・進学率が、一般地区と変わらなくなったことについては、
今回のテーマの主眼として書いておかなければなりません。
【次回は、被差別部落と学校の歴史:その2です】
お楽しみに。
部落を皆さんに知ってもらいたい!
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5 件のコメント:
こんにちは。
「橋のない川」は、とても考えさせられる、すぐれた作品ですね。
僕の務める中学校にも、この作品のDVDやビデオが、同和教育の教材の一つとして準備され、活用されていますよ。
大川原先生
こんにちは。
昔の資料を覗いてみれば、
本当に、教師の差別というのもひどかったようですね。
それに比べて、現在は、大川原先生を初め、
人権問題に真摯に取り組んでおられる
先生も多くなり、嬉しい限りです。
橋のない川は、映画も見ましたが、
何故か、あまり内容を覚えていませんが、
小説の、孝二の修学旅行シーンは、
いまでも心に焼き付いています。
穢多身分が皆裕福だったと言うのは間違いです。
裕福だったのは特権を持っていた一部の穢多頭だけで大半の穢多は借家住まいの貧しい生活を強いられていました。
穢多身分が裕福だったと言うのは一部の庄屋・豪農の豊かさだけを強調して百姓が裕福だったと言うようなものです。
百姓村にも庄屋と小作人・奉公人がいるように穢多村にもそれと同様の格差がありました。
こんにちは、あやともうします。
すみません、読ませていただいて不思議に思ったのは、
あなたが何を主張しているかわからないことです。
「被差別部落は、こんなひどい歴史があったんです、
こんな差別を受けていたんです。」と
部落出身以外の人に読ませてネガティブな感情を持たせつつ、
それから「部落は良いところなんです」と言われてもなあと思うんです。
これじゃあ、「おまえらは俺にとって加害者
酷い目にあわせた奴ら」と延々話しておいて
「さあ仲良くしましょ。同じ同じ変わらない!」
と言われているのと同じです。
落として持ち上げるというか・・・。
それと、何かの恩恵を受けている話。同和地域の銭湯はちょっと安いという記事がありましたよね。
今でも公務員の同和枠があります。
これは今ではもう逆差別に他ならないと思います。
こういうのを非差別側が「おかしい、やめよう!」と思うことこそ、
仲良くするための一歩じゃないでしょうか?
貴方の奥様は被差別部落出身であっても、
あなたはそうではない。
だったらそっとしておいて欲しい、
時間の流れと共に自然に混ざりたい薄まりたいというのが
現在の、非差別側の本音なんじゃないでしょうか?
最近、なかなかアップされませんね
楽しみにしてるんやけどな
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