「もうボチボチ来てはる頃やろ。チョット行ってきてぇなぁ」
義母が、娘である私の嫁に声をかけます。
「ほな、オレも一緒に行くわぁ」・・・
部落では、いくつになっても「天ぷらを買いに行く」のは子供の仕事。
嫁も、小さい時からずっ~と、天ぷらを買いに行ってきました。
嫁が生まれ育った部落には、決まった曜日に「天ぷら」を売りに、
軽バンを改造した移動販売車でオバちゃんがやってきます。
「オバちゃん。赤と白が5個ずつと、フクゼン10個ちょうだい」
「ハイよ!!今フクゼンが5個しかないし、チョット待ってくれるか?」
子供の頃から買いに行っている嫁は、手慣れた感じでオバさんに注文します。
オバさんは、衣をつけたフクゼンを油に入れながら・・・
「お母さん元気にしてはるか?」
「うん。元気やで」
なんて、世間話をしているうちに、熱々の天ぷらが揚がってきました。
実は、部落に売りに来る天ぷらは、エビやサツマイモではありません。
赤はレバー
白はミノ
そして、フクゼンは前回このブログで紹介した牛の肺。
部落の天ぷらは、『ホルモンの天ぷら』なのです。
「ハイ、おまっとうさん。おおきになぁ」
数が少なければ、少し待てばオバさんが揚げてくれますが、
数が多い時は、「オバちゃん、5時に取りに来るさかい、20個づつ揚げといて」
と、先に注文を出しておくと、時間通りに揚げてくれます。
それにしても、次から次へとお客さんが来て、
オバちゃんもてんてこ舞です。
部落の人は、この天ぷらが本当に好きですが、
皆さんが食べても、きっと好きになってしまうでしょう。
甘くてトロみのある付属のソースを付けて食べるのですが、
時にはオヤツに又、ご飯と一緒に食べてもいいし、
酒の肴にと、TPOを選ばない万能食品です。
勿論、エビやサツマイモの天ぷらも普通に食べますが、
部落で“天ぷら”と言うと『ホルモンの天ぷら』を指すことが多いですね。
「オバちゃん。どこから来てんの?」
ある時、私は聞いたことがあります。
だいぶ前の事だったので、不覚にも何処の地区だか忘れてしましましたが、
市内の部落から来ているということでした。
天ぷら売りのオバちゃんは、軽バンで市内の部落を回っています。
○曜日は☓☓部落
□曜日は△△部落という風に。
1個60円ですが、皆10個単位で買っていきますので、
結構な儲けになるかもしれません。
なぜなら、この部落には、
大抵の部落にもあるような肉屋・ホルモン屋がありません。
昔はあったようで店舗だけは残っているのですが、
私がこの部落に出入りするようになった頃には、
既に閉店していました。
大抵の部落にも・・・と書きましたが、
都市部の改良住宅が建っている部落では、
通りに面した棟の1階部分が店舗として供給されている場合も珍しくありません。
そのような、改良住宅内店舗に肉屋が入っていたり、
部落内で独立店舗を持っていたりと様々ですが、
とにかく、そのような店では肉やホルモンと併せて
『ホルモンの天ぷら』や『スジの焚いたん』(関西弁で焚いたものの意)など
部落の伝統的な惣菜も販売していることが多いのです。
例え、部落内に肉屋があってホルモンが手に入っても、
案外天ぷらって面倒くさくて難しい。
だからこそ週一回、天ぷら売りのオバちゃんが来るのを
皆心待ちにしているのです。
今は、そんな光景を見ることはありませんが、
昔は子供達もおやつ代わりに買って食べていたそうです。
丁度、100円玉握りしめて、駄菓子屋に行くような感覚だったのでしょうね。
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